「レシピだけじゃ足りない!料理がうまくなる“コツとポイント”とは?」

「この料理、なんだかうまくいかないなあ」
「レシピ通りにやったのに、先生のとちょっと違う…?」

料理教室をしていると、そんな声を耳にすることがあります。
そしてそのたびに思うのです。レシピだけでは伝えきれない、“料理の感覚”って本当にたくさんあるなあ、と。

実は、料理がぐっと美味しくなる“コツ”や“ポイント”は、文字では伝えきれないことの中にあることが多いのです。

香りの変化、音の違い、触ったときの感触。
そして何より、生徒さんとの会話や質問の中から引き出されていく小さな発見たち。

今日はそんな「料理のコツやポイントって、そもそも何なの?」という素朴な疑問について、料理教室の現場からお話ししてみたいと思います。

1. 料理の「コツ」や「ポイント」って何?

「ここがコツです」とか「この工程がポイントです」と言われること、よくありますよね。でも、それってどういうこと?と、生徒さんから聞かれることがあります。

コツやポイントとは、言い換えると「上手に作るための小さな鍵」。
同じレシピ、同じ材料でも、仕上がりがぐっと良くなる“ちょっとした工夫”や“意識の向けどころ”のことです。

たとえば、火加減の微調整、塩の入れる順番、材料の切り方ひとつで、味も食感も変わってしまう。それを事前に知っていると「料理がぐっと楽になる」という、小さな魔法のようなものだと私は思っています。

2. レシピの行間にある“見えない感覚”

料理には、「書いてあること」と「書いていないけど大事なこと」があります。

特に、タイミングや状態の“見極め”は、実際に見たり触ったりしないと伝わりにくい
「火が通ったサインは?」と聞かれて、「香りが変わるんですよ」と答えることもありますし、煮物で「ここで止めて」と言うのも、見た目や鍋の音が頼りになります。

これらはまさに、レシピの“行間”にあるもの。
目には見えない「感覚」をつかむことは、レシピの理解を何倍にも深めてくれます。

教室では、そうした感覚を共有するために、「この香りが変わったときが目安ですよ」「今、鍋の音が静かになったでしょう?」といった言葉が自然と出てきます。
それは実演しながらでないと、なかなか伝えられないんですよね。

3. 生徒さんの質問が、「本当のコツ」を引き出す

料理教室で教えていると、「これってもう火が通ってる?」「こっちのやり方じゃダメですか?」といった質問が、思いがけず大切なポイントを引き出してくれることがあります。

先生側からすると、当たり前にやっていることでも、初めての方には疑問がいっぱい。
その疑問に答える中で、「なるほど、ここがわかりにくいんだな」と気づき、その場で“言語化されたコツ”が生まれるのです。

つまり、コツやポイントはあらかじめ決まったものではなく、生徒さんとのやりとりの中で“育っていく”ものでもあるんですね。

実際に、「このおかげで納得できました」と言っていただく瞬間は、教えていて一番うれしいときでもあります。

4. 上手くいかない理由を、別の視点で伝える大切さ

「どうして失敗しちゃったんだろう?」という声も、教室ではよく聞きます。
そしてそこから生まれる説明こそ、実はとても深い学びになります。

「コツを知っている」ことと、「なぜうまくいかないのかを理解している」ことは、少し違います。

たとえば、焼きすぎてしまった原因は「火が強すぎた」だけでなく、「食材の水分が抜けていなかったから」という別の理由がある場合もあります。
また、「混ぜすぎたから生地が固くなった」なども、感覚的に体験しないとわかりにくい。

失敗には必ず理由があるので、そこを紐解くことで、コツとは違う角度からの理解が得られます。
それが、生徒さんにとって「なるほど!」という納得感につながるのです。

5. 「体験して覚える」からこそ、本当に身につく

どんなに丁寧に言葉で説明しても、やっぱり料理は“体験”が一番の学びです。

手に伝わる感触、香りの変化、音の違い。
それらを体で感じながら進めていく中で、「あ、こういうことか!」という気づきが生まれます。

そしてその気づきは、次に自分で作るときに迷わない強さになります。
感覚が自分の中に残っていれば、多少レシピが違っても応用ができるようになるからです。

料理教室は、そのための「体験の場」。
本を読むだけでは手に入らない、料理の“筋力”を育てる場所だと思っています。

結びに(あとがき)

コツやポイントは、決して“裏ワザ”ではなく、
料理を楽しく、納得して、自分のものにするためのヒントです。

そしてその多くは、体験して初めて「そういうことだったのか」と理解できるもの。

これからも、料理を通じてそんな“気づき”の時間を、一緒に味わっていけたらうれしいです。

この記事を書いた人

柿澤ひとし