
最近は便利な時代で、YouTubeやSNSを開けば、いろんなレシピがあふれています。
本屋に行けば、プロの技をわかりやすくまとめたレシピ本も手に取れます。
そんな中で、ふと考えるのです。
「今の時代に、料理教室に通う意味ってあるんだろうか?」と。
今日はそんな問いに、料理教室の現場からお答えしてみたいと思います。
料理教室だからこそ体験できる「五感で覚える料理」
最近よく思うんですけど、レシピって“文字”と“映像”では限界があるなって。
たとえば、「中火で炒めます」って書いてあっても、その中火って、どれくらい?とか、「香りが立ったら…」って言われても、その“香り”ってどんな香り?ってなることありませんか?
料理って、実は“五感”を総動員して作っているんですよね。
目で色の変化を見て、耳でジュッという音を聞いて、鼻で香りを感じて、「あ、そろそろだな」って判断する。
それを、動画や本だけで全部感じ取るのって、やっぱりちょっと難しい。
画面越しに料理してると、なんとなくできた気にはなるけど、いざ自分でやると「あれ?これで合ってるのかな?」って不安になること、よくあります。
でも、料理教室だとそれがぜんぶ“体感”できるんですよね。
たとえば、「はい、今香りが変わったのわかりますか?」って言った瞬間、ふわっと立ちのぼる湯気と一緒に「あ、これか!」って体が覚える感じ。
油の温度も、「この音がちょうどいいんです」って伝えると、なるほど、こういう音なんだって、耳がちゃんと覚える。
それって、“読む”とか“見る”だけではなかなか得られないものなんです。
どこかで習ったことって、ちゃんと体験をともなうと、忘れないんですよね。
だから料理教室は、「わかる」じゃなくて「わかるし、できる」になる場所。
そう思っています。

その場で聞ける、学べる、安心のサポート
料理してると、よくあるんです。
「この火加減でいいのかな?」とか、「ちょっと焦げてきたかも…いや、これが“香ばしい”ってこと?」とか。頭の中で小さな会議が始まる瞬間。
でも、動画だとどうしても一方通行で、わからないことがあっても誰にも聞けない。
生徒さんのなかには、「どうしても“とろみ”がうまくつかなくて、「動画ではこのくらいの時間で完成してるのに、私のはいつまで経ってもシャバシャバなんだけど?」って。
「焦ってもうちょっと煮込んでみたら、今度は具が原形をとどめていなくて…
とろみどころか、なんか全部が“なじみすぎ”て、むしろスープ(笑)。」そんなエピソードを教えてくれます。
でも、料理教室ならそんなとき、「先生、これでいいですか?」って、すぐ聞ける。
火を弱めた方がいいか、調味料を足すべきか、それともこのままでOKか。
目の前に私がいますから、その瞬間に、適切に適正な答えを得ることがきる。
それに、「しょうゆ大さじ1」って書いてあっても、「これ、薄口?濃口?どっち?」とか、「大さじ1って、山盛り?すり切り?」とか、実は細かいところで迷ってる人、結構多いと思うんです。
そういう“ちょっとした疑問”を、遠慮なく聞けるのが、料理教室のいいところ。
その場で聞けて、その場で解決できる。
だから安心して挑戦できるし、「できた!」っていう自信も生まれる。
それが、続けたくなる理由なんですよね。
“楽しい”が“記憶”になる、学びの空間
正直に言うと、私は料理に「正解」はないと思いますが、でもある程度の理論に基づいた方向性があると考えます。
その道筋がなかなか動画やレシピ本では説明しにくいというか?余計な説明を省いた方が、単品の料理作りは理解しやすいので、全体を理解するための説明が省かれることが多いのも事実です。とうぜん、動画の時間や文字数の制限などもあるかと思います。
でも、料理教室に来ると、不思議と頭じゃなくて“感覚”で覚えるんですよね。
「あの日、一緒に炒めてたとき、先生が“もうすぐ香りが変わるよ”って言ってたな~」とか、
「隣の人が間違えて全部入れちゃって笑い合ったな~」とか。そういう何気ない出来事と一緒に、作り方が自然と記憶に残ってるんです。
ちなみに、以前の料理クラスでこんなことがありました。
切ったネギを炒めるとき、「香りが立ったらOKです」って言ったら、ある生徒さんが「先生、“香りが立った”ってどこから立つんですか?」って。真剣な顔で(笑)。
そのあとみんなで「鼻に立った!」「目にもきた!」なんて笑いながら作ったんですが、
その方、次の週には見事な和風香味油を作ってきてくれました。
“笑って覚えた記憶”って、ほんとに強いんですよね。
料理教室って、間違えてもいい場所だし、笑える場所なんです。
静かに一人で黙々とやるのもいいけれど、誰かと一緒に「どうする?」「それ美味しそう!」って言いながら作る時間って、ちょっとした遠足みたいな楽しさがある。
だから、うまくいった味も、ちょっと焦がしちゃった思い出も、
全部が“自分だけのレシピノート”になるんだと思います。
料理の先にある、人とのつながり
料理教室に通う理由は、単に「料理が上手くなりたい」だけじゃないのかもしれません。
同じ材料を切って、同じ鍋をのぞき込んで、同じ味を「美味しいね」と笑い合う。そんな時間を過ごすことで、少しずつ自然に会話が生まれていきます。
気づけば、隣にいた人と買い物の話をしたり、おすすめの調味料を教え合ったり。
料理をきっかけにして広がる人とのつながりは、暮らしにちょっとした温かさをもたらしてくれます。
家でひとりでレシピを追う時間もいいけれど、誰かと一緒に作って食べる体験は、それだけで心がほぐれるものです。
これからの料理教室にできること
レシピは、読むもの。
料理教室は、感じるもの。
知識は本や動画で得られるけれど、体験は人から人へしか伝わらない。
香り、音、手ざわり──そのすべてが「あなたの料理」になる。
料理を学ぶとは、誰かの手を借りて、自分の手でできるようになること。
だから料理教室は、これからも「できる」を育てる場所であり続けます。